福島原発で再臨界が生じても連鎖的・爆発的な核分裂が生じない理由

環境エネルギー政策研究所(ISEP)の飯田哲也氏が『「最悪シナリオ」はどこまで最悪か』(PDF)というレポート出した。
以下、まとめ部分を抜粋:
  • 再臨界状態が起こるとすれば、その可能性は圧力容器内部の方が相対的に高い。ホウ素投入の効果はあるが、再臨界を抑止できると保障することはできない。
  • 仮に再臨界が起きても、核爆発のように連鎖的・爆発的に広がるのではなく、せいぜいスパイク(瞬間的な臨界超過状態)を何度か繰り返す程度ではないか。
  • その場合、周辺の放射線量(中性子、ガンマ線)は東海村JCO臨界事故のように瞬間的に高くはなっても、核爆発のように甚大な爆発被害が広がることはありそうもない。
  • 再臨界の有無に拘わらず、使用済み核燃料プールでの燃料溶融や圧力容器・格納容器における水蒸気爆発によって、これまでのベント(意図的な圧力開放)をはるかに超える放射能(核分裂生成物)の外部放出の可能性は否定できない。
  • ただし、圧力容器・格納容器の大爆発ではなく、構造上の弱い箇所の破損による瞬時放出に留まると推定される。そのため、黒鉛火災が何日も続いて放射能を大量放出したチェルノブイリ事故とは異なり、瞬時的な放出に留まると推定されるため、深刻な汚染地帯はチェルノブイリ事故よりも限定的に留まるものと推定される。
  • したがって、首都圏や仙台などの大都市の避難勧告のような事態は、おそらく避けることができるものと判断できるのではないか。
  • ただし、最悪シナリオが生じた場合に放出される放射能は、これまで一時的に放出された放射能よりも桁違いに多い可能性があるため、状況の推移によっては、現状の避難範囲(避難20km、屋内退避30km)の再検討やヨウ素剤の配布計画、広範な地域で被曝を最小限に抑えるためのマニュアルの周知徹底などが必要と考える。

ポイントは、「仮に再臨界が起きても、核爆発のように連鎖的・爆発的に広がるのではなく、せいぜいスパイク(瞬間的な臨界超過状態)を何度か繰り返す程度ではないか」というところだと思われる。本文では、北村晴彦東北大学名誉教授の主張の引用として以下のように説明している:

圧力容器下部の再臨界が起こった場合には、そのような爆発的事態は起こりえません。(再度臨界になる⇒核的出力が急上昇する⇒反応度フィードバックがかかるがある程度までは出力上昇が続く⇒どこかのレベルで出力がほぼ安定する⇒燃料温度が上昇し燃料溶融が起こる⇒出力と温度がさらに上昇する⇒溶融した燃料の体積膨張が起こり反応度フィードバックがかかる⇒臨界状態が解消し出力が少し低下する⇒また臨界になる)のような形で事象が推移するでしょう。もちろん極めて乱暴な推測にすぎません。しかし、即発臨界や爆発的な事象は起こらないということは言えると思います。圧力容器の中で臨界現象が起こることは、望ましくはないが圧力容器内に燃料が閉じ込められていれば事態の深刻さはチェルノブイリとは比較にならないほど小さいといっていいでしょう。

通常、反応度フィードバックは減速材である軽水の減少によって生じると説明されている(ウィキペディアより):

核分裂反応が進行し過出力になると、炉心の温度が上昇してボイド(蒸気)が増加する。炉内の容積は一定であるのでボイドの増加分だけ減速材である軽水が少なくなり、高速中性子が熱中性子に減速されず、結果として核分裂反応の進行が抑えられる。 逆に核分裂反応が弱まり低出力になると、炉心の温度が下降しボイドが減少する。減速材である軽水が増え、高速中性子が熱中性子に減速され、核分裂反応が進行する。

しかし、反応度フィードバックは溶融した燃料の体積膨張によっても生じるらしい。検索してみると、三菱原子力工業株式会社の特許内容ページにも同様の記載があった。

異常な出力上昇により、燃料の中心が溶融し、燃料ペレット内の核分裂生成ガス(FPガス)の体積膨張、溶融による燃料の体積膨張を駆動力として、溶融燃料そのもの、あるいは燃料ペレット全体が軸方向に移動して、負の反応度を生じる。

再臨界が起こっても核爆発のように連鎖的・爆発的に広がることはないという主張には、妥当性があるようだ。

関連記事:
・推定される原発事故対応の展開〜疎開先からの帰京タイミングは?

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